ロンリーファイター
6.それぞれに歩く

1.30代、彼の場合






『さよなら』





そう背中を向け去って行く女を、今まで何度見ただろう。

その度俺は、追うことも止めることもなく、ただ一人に戻るだけ。





ーピピピピ、ピピピピ…

「…、」



アラームの音に目を覚ませば、そこはいつも通りの自分の部屋。

朝だ、起きなければと眠気で怠い体を起こし、バスルームへ向かいシャワーを浴びる。



(今日は昼間に会議…また部長と椎菜の喧嘩に板挟みになんのか、行きたくねー…)



頭の中で今日のスケジュールを確認しながらシャワーを浴び終え、バスルームを出る。

そしてスーツに袖を通し、髪をセットし、ネクタイを締めた。



(…よし)

鏡に映る完璧な装いの自分。それは今日も、変わらない。



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