ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~

3 資料探し


 シロウはクローニングに関する研究に携わる研究員だった。
 本来なら人間の仕事であったが、研究者が高齢となり、代わりに研究を引き継いだのだ。
 シロウの報告はシイナにとって満足すぎるものだった。
 端末に入れられた資料もわかりやすく、それを読み上げるだけでなく丁寧な解説を入れ、かといってシイナが退屈することもない――他のクローンではこうはいくまい。
 すでに人間よりも、人間に代わってこのドームを維持し続けるクローンが多いことに、シイナは今更ながら気づいた。
 最早、人間よりも多いクローン。
 最後の希望であるマナさえ、クローンだった。
 もしも、マナやシロウのような特別なクローンを創り出すことができるのなら、人類も滅びたとは言えないのではないか。
 少なくとも、表面的には。
 そんな考えが頭をよぎる。

 今後は、クローニング技術に力を入れるべきなのかも知れない。

 そう思わせるに十分な報告だった。
 知能低下と生殖能力についての弊害が克服出来れば、また母体を得ることも可能かもと、シイナはシロウの報告を聞きながら改めて考えた。
「――以上です」
 報告がすむと、シロウはある希望を口にした。
「以前のクローニングの資料を見たいと?」
「そうです」
「何故?」
「クローニング処理について一つ気になることがあるのです。初期の段階から行われたクローニングの資料を見れば、気がかりも解消するかと」
 シイナの考えを踏襲するかのようなシロウの希望に、内心驚く。
「でも、あなたが希望する資料はデータではなく紙媒体よ。資料倉庫にあるのは間違いないけれど、何十年も手つかずのままで探すのは大変かも知れない」
「構いません。探す年代はすでに絞り込んであります。資料倉庫は年代別に分類してあると確認済みです。許可して頂ければ自分で探します」
 シロウは資料倉庫に入ったことがないから、そのように簡単に言うが、あそこは年代以上の細かな分類もせずに棚に押し込められた資料で溢れかえっている。
 以前、自分もマナに関する研究で資料を探そうとしてクローンを連れて行ったが、丸二日かかったことを思い出す。
 シイナは溜息をついた。
 端末の電源を落とし、立ち上がる。
「わかった。私も行くわ」
「博士? あなたの手を煩わすようなことではありません」
「あなた一人では、目的のものを探すには1週間はかかるかもしれない。それ以上に煩わしいことなど、今の私にはないわ。それに、あなたの話を聞いて、私も気になる資料をもう一度見てみたいの。これは決定よ」
「――わかりました。よろしくお願いします」









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