黄金時間が過ぎるまで〜もう一つの番外編

天使の証明

「お前って本当バカな!…あの女の事は忘れて、さっさと戻って来いよ」

薄暗いアパートの一室で、黒いロングコートと帽子をかぶった男が寝転んで、ベッドを占拠していた。

もう一人の男は、よれよれのハンテンを着ているが、キチンと正座をして、この口の悪い男の説教を聞いている。

「…カイサル…忘れる事が出来ないから、こうして堕天使になってしまったんですよ…」

「だーかーらー…天使が恋をしたら、天界から堕ちる事ぐらい知ってただろ?!なのにお前ときたら、人間の女になんか恋しやがって…崇高な俺達の仕事は、どうでもいいのかよ?!」

「…仕事は…少し心残りですが、仕方ありません。でもあの人の近くで暮らせる事は、幸せなんですよ…」

「あのなー、あの女は恋人がいるんだぞ?それでもお前は、あきらめる気はないのかよ?!」

「それは…何度も努力はしてみましたが、やっぱりムリなんです…」

「ああ分かったよ、同僚から堕天使が出たのは情けないが、仕方ない…ま・頑張れよ。ただ、今ならまだ…いや何でもない。じゃーなラサエル」

カイサルはそう言うと、暗闇の中へと消えて行った。
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