守護者たちの饗宴 ―エメラルド・ナイト―
ACT0.傭兵たちの楽屋裏

Scene0.Marvelous Mercenary

「護衛の依頼と聞いているが」

「左様」


 傭兵、ベリル・レジデントは改めて対面に座る壮年の男を観察した。

 がっちりとした体格に鋭い眼光。

高級なスーツに身を包んではいるが、歴戦の傭兵に勝るとも劣らない凄みを感じさせる。

複数の企業の取りまとめ役をしているとの事だったが、本当にそれだけだろうか。

 だが、戦争経験はないであろうことは見て取れた。

生死と隣り合わせの戦場をくぐり抜けた者とそうでない者とでは纏う雰囲気に隔たりがある。

彼の戦場(いくさば)は銃を必要とする戦場(せんじょう)とはまた違う場所なのだろう。


「自己紹介が遅れたな。

私の名は御剣兼定。

貴君に護衛を頼みたいのは娘である絵理とその同行者たちだ」

 御剣がそう言うと、彼の隣に控えていた秘書らしき男がベリルにA4サイズのファイルを差し出した。

中を確認してみると今回の護衛対象の写真とプロフィールが記載された書類。

三人の少年少女はみな美しい顔立ちだが実際の年齢よりも幼く見えた。

日本人自体の外見年齢が他国の人々よりも幼い傾向があるせいだろう。
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