慟哭


ようやく、バスから降り立つ


道路の向かいのバス停に、若者が一人立っているのが目に入った


黄色いラインの入った黒いジャージ
ショルダータイプの
黒いスポーツバッグ


赤い野球帽の下の鋭い眼差し


こんな人家もまばらな
何もない山の中で


一時間に一本しかない駅に向かうバス


彼の視線は、手にした携帯とバスが来る方向を交互に往き来している



地元の人間ではない


私の脚は動き出す


道路を渡り、彼に近寄る


見えない何かが私にそうさせる


見知らぬ人と話すことなど苦手なのに

逃してはならない、と思う


「あのう…」


私が話し掛けると、
若者は無言で身構えた


「突然、こんなこと訊いてすみません。
お墓参りですか?」


「…そうですけど…」


その目には、強い警戒の色が浮かぶ


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