机の人形
第4章

生きたいから

朝から恋人がやってきた。
私は生きなければならない。

恋人は私の部屋で長い時間居座っていて、
「お前なんか知らない。」
「お前のことなんて心配してない。」
とくどくど言っている。

「知らないわよ。」
私はそう言い、先日同様恋人を罵った。

朝っぱらからの情事の汗でシーツが湿っている。
「早く起きろ。」
恋人はそう言い、片手で軽く額をでこピンして出て行った。

それは、希望だった。
私はそれを以前から分かっていた。
今日は晴天だ。
雪は積もっているけれど。

私はすばやく起きた。
半分だけは生きているんだと感じる。
本当に分からない。
分からないのだけは分かっている。
私が付き合いたいと言って、それに恋人が同意するとは知らなかった。
彼はたまに間違えてしまう。
再び私は湿ったシーツに横たわり、激しく泣いた。
分からない。
獣のほうがまだましだ。
人間なら人間らしく生きなければ。
恋人はあわてるだろう。
冗談じゃないと思い、じたばたと獣のように交わろうとするだろう。

私は後悔してばかりだ。
すべてに自信がない。
生きていると思ったことすらない。
それなのに、私は元気ですっきりとしている。
生きなければと思う。
湿ったシーツをはがす自分を子供のように思う。
軽い体に満足し、洗面所へ向かう。

頭ははっきりしていた。
たまに恋人との情事ややりとりを忘れてしまい、新しいシーツに倒れこんでそれを思い出した。
そのうちだんだんと弱ってきて、眠り続けた。
自分が死人のように感じた。
すべてわかっているのに。



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