部長とあたしの10日間
どうしてだろう。
部長に触れられたおでこがじわじわ熱くなっていく。
胸のざわめきが収まらない。


小さくなる黒いスーツを見つめながらあたしは手を握り締めて、そしてすぐにびっくりして開き直した。


「そうだ…」


手の中にはまだ部長のハンカチがあった。
スーツと同じ、少し光沢のある黒いハンカチ。
あたしなんかがやるより、ずっときれいにアイロンがかけてある。


何をやるにもスマートな小泉部長。
言葉を交わしたのは、まだほんの数えるほど。


偉そうで失礼な言動も多いけど。
昨日も今日も、あたしが困ってるときは何だかんだ言って助けてくれる。


無愛想で不機嫌なくせに。
ふとしたときに見せる表情は優しい。


どうしよう。
あたしとしたことが、完全にあいつのペースに飲まれてる。


昨日他の男に振られたばかりなのに。
何であたしは、あいつの後ろ姿から目が離せないのだろう…。
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