ライラックをあなたに…
朝食を摂り終えた俺らは、のんびりとベランダで日向ぼっこを始めた。
愛用のガーデンファニチャーが気に入ったようで、彼女は椅子に腰かけ俺の教科書を読んでいる。
「それ、面白い?」
「………」
彼女からの返答が無い所を見ると、彼女にもそれなりに興味深いモノなのだろう。
樹木医と言っても守備範囲は広い。
造園業に携わっている人が大半だから、それ系の書籍は多く出回っている。
けれど、俺はそのもっと上を目指している。
いうなれば、樹木のスペシャリスト。
世間では、樹木医の事を『樹のお医者さん』等と呼ぶが、俺が目指しているモノは樹のお医者さんに頼られるような『樹の神医』だ。
研究に研究を重ね樹木の生態を熟慮し、尚且つ自然環境や人為的環境も踏まえた上でより良い樹木の生長を促す事が出来る……そんな樹木医になる事だ。
道のりは険しく、そして長い。
けれど、諦めさえしなければ、いつかはその領域に達する事が出来ると信じて……。
『男』は、いつまでも夢をみる生き物。
それは俺も例外ではない。
だけど、夢を夢のままで終わらせるか、そうでないかはその人次第だと思っている。