ライラックをあなたに…


「まぁね、一応『樹木医補』だから……俺」

「え?……樹木……ぃ……ほ?」

「ん」


ニコッと笑みを浮かべた彼は、私の手から苗ポットを受取り、プランターへ植え替え始めた。


私も彼に促されるままにその苗を手で支えて、彼がその周りに培養土を入れ始めた。


「俺、農大で樹木医の勉強をしてるんだ」

「え?」

「樹木医は、業務経歴7年以上を要する。簡単には取得出来ない資格なんだ」

「………」

「大学4年で修士課程を終え、今は大学院で研究しながら実務経験を……ね」

「あぁ……なるほど~」


それで、知識が豊富で手際がいい訳だ。

本間一颯という人物の謎が1つ解けた。

彼は心が綺麗なだけでなく、人としてしっかりとした夢をきちんと描いている。


私には無い……大事な部分を。



小1時間程して、植え替えを終えた私達。


「寿々さん、シャワーして来ていいよ」

「へ?」

「入りたいんでしょ?」

「あっ……うん」


またまた、彼の優しさに甘えてしまった。

けれど、今はそれが有難い。


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