桜山が見事な紅葉の彩りを見せる頃、

 お屋敷の桜の樹が茜色に染まり、

 絢爛たる華やぎを辺り一面に披露していた。


 祐里は、毎日、桜の樹の下に赴いては、

 はらはらと舞い散る落ち葉へ語りかける。


「桜さん、綺麗な色でございますね。

 錦の反物を織っているようでございます。

 この反物は、祐里に似合いますでしょうか。

 光祐さまにご覧いただきとうございますね」


 黄色から茜色に染まった葉は、祐里の周りを包んで舞い散り、

 問いに応えて、祐里に錦を纏わせる。


 桜の樹は、愛しい祐里を、落ち葉で優しく包んで、

 しあわせを感じていた。


 祐里の足元には、艶やかな落ち葉が錦の絨毯のように広がっていた。


 祐里は、風に舞い散る落ち葉を庭箒で桜の樹の根元に掃き寄せる。


 この落ち葉は、お屋敷の土に返り、再び、桜の樹の養分となる。


「桜さん、落ち葉を光祐さまにお送りいたしましょうね」

 祐里は、美しい茜色の落ち葉を拾って手のひらで包み込み、

 光祐さまへの想いを籠めて書いた手紙に同封した。


 祐里の熱い想いは、茜色の葉に託されて、

 光祐さまの住む都へ旅に出る。

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