祐里の部屋の扉が軽やかに叩かれた。


 祐里が「はい」と返事をして扉を開けた途端に、

 華やかな薫子奥さまの笑顔が飛び込んできた。

「祐里さん、今し方電報が届いて、

 光祐さんが春の休暇で、三年ぶりに帰っていらっしゃるの。

 森尾と一緒に駅までお迎えに行っていただけるかしら」

 貧血気味の奥さまは、透き通るような色白の肌の持ち主。

 大切に育てられた薔薇のようなお方。


 一人息子の光祐さまが帰省されるので、

 あまりの嬉しさに色白の肌が上気して、頬が薔薇色に輝いて見えた。


「光祐さまがお帰りになられるのでございますか。 

 はい、すぐに参ります」

三年ぶりに帰省される光祐さま。

 お便りのみの三年間は、長い冬のようで、

 どんなにお会いしたかった事か……
 
 祐里の心は、春の陽射しに包まれた。


「今夜は、光祐さんの好物を紫乃に揃えてもらいましょうね。

 駅に行く途中に魚桜で特別なお魚を注文してくださいね。

 森尾が玄関に車を廻していますからお願いします」


「はい、奥さま、畏まりました」

 祐里は、お気に入りの桜色のワンピースに着替えて、

 若葉色のカーディガンを羽織ると玄関へ急いだ。


 玄関を出ると、

 春の陽射しが光祐さまの帰りを祝すように祐里を包み込む。

 祐里の長い黒髪と色白の肌に桜色のワンピースが映えて、

 一足早い桜満開の雰囲気を辺り一面に醸し出した。

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