よりによって、愛人がデザイナーを務める店に連れてくるなんて、冬矢の神経が信じられなかった。

しかも堂々と紹介して来るなんて、里桜を馬鹿にしているとしか思えない。

人前で……特に天音の前でヒステリックな姿を見せたくない一心で堪えていたけれど、胸の中には消化出来ない程の怒りが渦巻いていた。

「気に入ったドレスは有ったかしら?」

天音が、余裕の笑みを浮かべながら問いかけて来る事にも腹が立った。

「ここに飾ってあるのは全て新作なのよ。気に入ってくれるといいけど」

里桜の気持ちなど知るわけもなく、天音はドレスの説明をしていく。

愛人の立場の天音からしたら、里桜は邪魔な存在なんだろうと思っていた。

けれど、天音は里桜に敵意を持っているようには見えない。

(相手にもしてないって事?)

里桜は、じっと天音を見た。

長身で長い手足、細いのに女らしく柔らかな体つき。

背中を覆う長めの髪は華やかに巻かれ、綺麗な栗色に染められていた。

小さな顔の中に、大きな目が印象的な美しい女性。

年はおそらく冬矢と同じ位。
二人が並ぶと、美男美女で本当に絵になると思った

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