翌日。

冬矢は朝早くから仕事に出掛け、里桜は特に予定もなく部屋で寛いでいた。

もうそろそろ昼になるという頃、部屋に黒木がやって来て言った。

「お客様がお見えです」

「……私に?」

里桜がこの家に居る事を知っている人間は、極僅かだった。

だから自分に来客があるとは思ってもいなかった。

一体誰が訪ねて来たと言うのだろう……首を傾げる里桜は、

「はい、円城寺様がお見えです」

黒木の言葉に、驚き目を見開いた。

「本当に私に? 冬矢を訪ねて来たんじゃ……」


「冬矢様が出張で不在なのはご存知のようでした。里桜様に会いたいとの事で、階下の応接室でお待ち頂いております」

動揺を隠せない里桜に、黒木は淡々とした口調で言った。

「……分かりました、すぐに行きます」

里桜がそう言うと、黒木は部屋を出て行った。

里桜は落ち着かない気持ちでドレッサーに向かい、身なりを整え始めた。

(私に用って何?)

鏡の中の不安そうな表情の自分を見ながら考える。

冬矢が不在なのを知っていて何故わざわざ里桜を訪ねて来たのか……。

何の用件なのか、想像すると不安が募った。

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