貴方が便箋に筆を走らせているとき、


私はそれを黙ってみていた。


貴方が偽りの名前を口にしたとき、

私は何も訊くことをしなかった。


貴方の暗い深緑がどこか遠くを見つめているとき、

私は目を合わせることができなかった。


…貴方は私の身体を、大切なもののように扱う。

肌を滑る手は優しくて、

もう私の全てを、彼に知られてしまったような気分になった。


けれど、私は何も知らない。

貴方の肌に残っている古傷やあざに触れても、

私はその奥に潜むものを、感じることすらできないのだ。


触れる私の手を掴んで、わかったように目を細めながら、彼は言う。


『気にしなくていいよ』


…貴方は、何もわかっていない。

その細められた瞳の裏にあるものに触れたくて、

私は手を伸ばしているのに。



……教えては、くれませんか。


今まで手を伸ばせなかったもの、

触れてみたい。

感じてみたい。




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