冷たいアナタの愛し方
第1章 秘密
「剣だ…!剣を抱いて生まれてきたぞ…!」


待望の女の子の誕生に中立国家ローレン王国の国王は驚愕に唇を震わせた。


生まれてきた娘の手には、抜き身の金色の剣。

剣を抱くようにして両手で抱えて生まれてきた娘の名は、オリビア。


父王へスターは箝口令を敷き、出産に疲弊しきった妻アンナを労ってやることも忘れてオリビアを産湯に浸してやりながら、不安にかられた。


「予言が本当に形になるなんて…」


創世記の1ページ目に記された予言――


『剣を手に生まれし者、この世を総べる覇王となるだろう』



力は破壊を呼ぶ。

中立国家として、力をその身に抱え込むことは許されない。

ましてやその覇王の資格を持って生まれてきたのが我が子だとは――


「守らなければ。ガレリア王国にこのことを知られてしまったら…この子は殺されてしまう」


――金褐色の髪に金褐色の瞳をした待望の女の子。

この子には力や暴力の怖さを知ってほしくない。


「おお…剣が…身体に吸い込まれていく…」


胸の中に沈んでいくように抜き身の剣は消え、へスターとアンナはほっとして乳を吸うオリビアを愛しげに見つめた。


「だが…鞘は…どこに?とにかくこの子の存在を隠さないと」


へスターとアンナは、近隣国に“娘は死産した”と通告を出した。
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