塔矢が声をかけて執務室の戸を開けると、入口付近に置かれた椅子に腰掛けていた人物が立ち上がった。
 塔矢に続いて部屋に入ってきた和成の姿を認めると一礼する。

 長い髪を頭の後ろで馬のしっぽのように一つに結んだ小柄なその人は、どう見てもまだ年若い女性に見える。

 和成は訝しげにその人を見つめて塔矢に問いかけた。


「塔矢殿、護衛って言いませんでしたか? 私には女の子に見えるんですけど」


 その言葉に目の前の小柄な人物は、途端に不快感を露わにすると、和成を見上げて口を開いた。


「女に護衛など任せられないとおっしゃいますか? 君主様は切れ者だとお伺いしておりましたが、女性を蔑視なさる頭の固い方だとは存じませんでした。その前時代的お考えは、お改めになった方がよいかと存じます」


 和成は面食らって絶句すると、少しの間彼女を凝視した。

 君主になって以来、面と向かって意見する者は塔矢以外にいなかったからだ。

この作品のキーワード
ファンタジー  異世界  和風  片想い  一途  悲恋の後日談  切ない 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。