その夜、月海はいつもより早く自室の外に出た。

 昼間の和成の不思議は謎が解けた。
 後は夜の和成の不思議だけである。
 どうしても何を言っているのか知りたくなった。

 月海は目立たない暗い色の着物を着て、中庭に降りた。

 いつも和成が現れる場所は大体一緒だ。
 月海はその場所から、遠すぎず近すぎず正面でない場所に生えた木の上に上った。

 そこからは君主居室の庭がよく見える。
 庭に植えられた大きな桜の木が、すでに満開となっていた。

 月海は太い枝に座り、幹に腕を回して掴まった。

 少しして庭の奥に和成の姿が見えた。
 和成は途中桜の木の前で立ち止まり、少し眺めた後、まっすぐこちらへ向かってきた。

 月海は気配を殺して身を固くする。
 和成が一歩一歩と近付いてくるごとに鼓動が早くなり、思わず着物の胸元を掴んだ。

 和成がいつもの場所に到着した。
 斜め横から見る和成の顔がはっきりと見える。
 ここからなら口の動きもはっきりとわかりそうだ。

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ファンタジー  異世界  和風  片想い  一途  悲恋の後日談  切ない 

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