片恋

【遼平 1】



ピンポーン、と

真っ暗な家に
チャイムが響き渡る。

何の反応もないので、
鍵を使ってドアを開けた。

中に入り電気をつけると、
息をひそめた弟が
玄関に座りこんでいた。


「・・・びっくりしたあ。」

こっちこそ、驚いた。


「いたのか、周平。」

「おかえり、遼平くん。」


りょうへいくん?と
聞きとがめると、
慌てて弟が言い直す。

「ことこちゃんのが、
 うつっちゃった。」

「琴子ちゃん?
 最近、話したのか?」


毎日来てるよ、と

なんでもないように弟は言い
立ち上がってリビングに向かう。

歩きながら、一個一個
電気をつけてまわる。


意外な事を、聞いた。

と思ったそばから、それを打ち消す。


たぶん、亮介に会いに来てるのだ。


< 12 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop