片恋

【遼平 4】




甲高い、
耳を塞ぐような機械音と
電子的な衝撃音にかき消されながら、

琴子が疲れたように、息を吐いた。

「少し、その辺のファミレスで休もうか。」

声をかけると、
琴子は黙って笑い、首を振る。

それから、顔をうつむけて呟いた。

「・・・亮介、ここには来てないみたいだね。」


小中学生の頃ならともかく、
今になって亮介が
ゲームセンターに足を運んだりは
しないような気がしたが、

亮介を探すと言って
聞かない琴子が納得できて、

それでいて
連れて来られるような場所といえば、
それくらいしかなかった。


蛍光灯の強い光の中で
一段と青白く、か細く見える琴子の手を引いて、
ゲームセンターの出口へと移動する。

後ろから来た学生服の集団が、
ドアの近くにいた琴子を
よけるようにして追い越して行った。

そのまま、目の前の道を行きかう
黒々とした人の流れの中へと消えていく。

騒がしい店内は眩しい程に明るく、
ガラスの向こうで、
街灯のない道をめまぐるしく人が過ぎていくのは、

暗闇で何かが蠢いているようにしか見えない。


学生の下校時刻も
会社員の通勤ラッシュも過ぎ、

街は人が増えて、
活気を取り戻したようだった。
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