竹で矢を【短編】
夢見る少年




「武士になりたい。武士になったらこの竹で矢を作る」




今から150年以上前に、そう言って、家の側に竹を植えた少年がいた。




「そんな事言って……。百姓の子が、武士になれるわけないでしょ?」


「いいや、俺はなる」




少年ははにかんで、その植えたばかりの竹を見つめた。




「いつか、必ず俺は、日本一強い武士になってみせる。あいつと一緒にな」


「あいつ……?
あぁ、試衛館の勇(いさみ)さん?」




深く、少年は頷く。




「勇って、なんか慣れねぇんだよな。
あいつは、かっちゃんでいいじゃないか」


「ふふ、そうね」





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