優しい爪先立ちのしかた
あなたの靱帯


「その汚い手で栄生さんに触れないでください」


いつの間にか、梢が傍に居た。

その言葉に星屋も落ち着きを取り戻して、手を皿へ戻す。



“星屋さんがね、あの格好してるの私の為なの”

滝埜は仕方ないという顔をする。

“男の人、怖かった時があって。だから、ずっとあのままなんだけど”

栄生はそこまで聞いて、察した。

だけど、その逆接の言葉の次。

“一生変わらないものなんて、ないから”

それは、想いも一緒なのだろう。

滝埜が星屋に抱く感情が少し他とは違うものだとは、もうなんとなく栄生は分かっていた。




「で、栄生さんは何したんですか?」

すぐに梢は栄生の方を見た。



< 170 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop