結局そのせいで貴重な週末はよく眠れなかった。

重ねて作ってしまったクマを丁寧に化粧でカバーして、足取り重たくのっそりと部屋を出る。そしてため息をついた。

もうダメだ。

寝不足で頭が痛いし、なんとなく本気かどうかも分からないプロポーズに翻弄されて心身ともに疲れきっているのだ。こんなことで一週間やっていけるのか不安にもなった。

「あー…。」

相手は酔っぱらい、本気じゃないなんてことも記憶にないなんて可能性も大いにある。ただ問題は有紗が素面だったということで。

いやいや、そんな事じゃない。

もっと大きな問題は。

「昔の記憶がフィードバック…。」

そう言って有紗は額に手を当てて目を閉じた。

遠い昔に闇に葬り去った心の切れ端、若気の至りだったと思いたい何とも燃えカスが残るじれったい記憶に頭を抱えたくなる。思い出すだけで体が疼き叫びながら駆けまわりたい衝動に駆られるのだ。

出来る事なら今すぐにやりたい。

「あー!!もう!」

駅に着く前に発散しようと人通りがない場所で、許される範囲の声量を使って叫んでみた。少しだけ解消されたかもしれない。

家を出る前に冷蔵庫でスタンバイしていた栄養ドリンクを飲み干し気合を入れた。今日1日を切り抜ける為の最強の願掛けだ。ここから先は誰に会うか分からない、気を引き締めていかないと誰の目に触れるか分からないのだ。

変な噂でもたってしまったらそれこそ最悪。

女だらけの職場じゃないから楽だろうと思われがちだけどそうじゃない。男だって噂が大好きだし勝手に妄想してはよく分からない適当な話を面白おかしく広げられているのだ。

多勢に無勢ってこういうこと。

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