門真大輔。

リダイヤルでは埋もれていても着信では割とすぐに表示されてきた。今週は比較的他部署とも交流が無かったせいだなと有紗はぼんやり思ってダイヤルをする。

1コール、2コール、3コール。

連絡してくれと言われていたが、待っている方がすぐに対応できる状態にないこともあるなと諦めてため息をついた時だった。

5コールめ。

「もしもし。」

聞きなれた低い声が有紗の耳の届く。

その瞬間、甘えることを許されたような気がして一気に寂しさが体から抜けていくのを感じた。

「もしもし、終わったよ!」

「…なんで怒ってんの。」

「ちょっと嫌なことがあって。」

なんでもないと無理に強がらなくてもいい空間に溶け込んでいくのが分かる。電話の向こうの大輔もそう捉えたのか納得したような聞き流すような声を漏らして次の言葉に繋げた。

「今どこ?」

「天満駅。」

「すぐ行く。ロータリーで待ってて。」

「えっ?」

「1人だろ?送ってってやるから待ってて。」

思ってもみない展開だったが有紗は素直に大輔の言うとおりに従うことにしてお礼を言う。そしてそのまま電話を切ると首を傾げた。

だがふと視線を流した瞬間、駅近だった店がまだ視界の中に入ってきて怒りが収まらない。ロータリーからも見えると思うと腹が立ってしようがなかった。

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