「長井さん。お待たせしました……」



美衣の家をあとにした俺は、美衣の実家の近くでずっと俺を待ってくれていた長井さんの車へと戻った。



「優さん、お帰りなさい。……どうでした?」



俺はその質問に、力なく首を左右に振った。


すると、俺の気持ちを察してくれた長井さんは、もうそれ以上のことは何も聞かずにそっとしておいてくれた。


それからはずっと互いに無言のまま、車はドラマの撮影が行われるスタジオに向かって走っていく。


俺はとくに何をするわけでもなく、心地いい揺れに身を任せ、ただひたすら流れる景色をぼんやりと見つめていた。


だけど。



──『そんな手で触らないでっ!』



俺の手を払いのけ、声を荒げたあの瞬間の美衣が頭の中で何度もリピートして離れない。


正直、あれはさすがの俺も堪えた……。


あの時、一瞬何が起きたかわかんなくて頭の中が真っ白になった。


けど、あの時の美衣は、怒りというよりはひどく傷ついているような、そんな目をしていて。


美衣にあんなことを言わせてしまったのも、あんな目をさせてしまったのも、それは他でもない俺なわけで……。


美衣は何も悪くない。


悪いのは全部、この俺なんだ。


俺が美衣をあそこまで傷付けてしまったんだ……。







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