新しいバイトが始まった日から、私の毎日は怒涛のように流れていった。もうざばざばと。大きな浮き輪にのってスライダーを滑っている気分だ。くるくると回って、全ての光景が飛んでいき、新鮮に思える。

 思えば刺激だったのだろう。久しぶりの新しい環境で、私は多少浮かれていた。

 エロ高校生と暗く沈みこんだ就活中の彼氏から離れて、大雑把で柳が風に揺れるような軽さの店長、いじめっ子で腕のいい板前の龍さん、元気で頼りがいのあるツルさんに囲まれて、楽しかったのだ。

 明るく笑えるというのは素晴らしい。

 生活は多少昼夜逆転していたけど、それでも私は元気だった。

 そして、ついに、彼もまだ新人に近いということで私は顔あわせをしてなかったバイトの、ウマ君、赤谷冬馬君にやっと会えた時には、6月の最後になっていた。

 その日は一日雨が降っていて、夕方も蒸し暑かった。

「シカさん、やっと会えましたねえ!」

 冬馬君、この居酒屋「山神」では「ウマ」と皆に呼ばれている男の子は、私より半年前に入った大学生だった。大学3回生で、私よりひとつ下。

 刈り込んだ頭は捻り鉢巻が似合いそうだ。クラブがワンダーフォーゲル部だというのはかなり頷ける、頑丈そうな体つきをしていた。

 私は頭を下げる。

「鹿倉です、宜しくお願いします」

「お願いします!」

 豪快にあははと笑って、ウマ君は頭をかく。毎年のデータから見て今晩は暇だろうからと、新人二人が一緒に入ることになったのだ。