山神様にお願い


 ツルさんも笑顔で大きな声で言ってくれた。

「おはよう、シカちゃん!」

「おはようございます」

 私も笑った。

 あ、笑えるわ。―――――――――――そう思った。



 そんなわけで、私としたら普通のつもりだったのだ。つまり、頭はね。だけど体は案外心とシンクロしているらしい。

 心がショックを受けているかどうかの自覚がなかったのに、影響を受けてるんだ、と思ってビックリした。

 今晩の私の手には力がなくて、お皿を2枚ほど落として割ってしまった。そしてボールペンを持つ手が震えるときがあって、注文をとるスピードが遅かった。

「シカ、どうした?」

 ビールサーバーの前で夕波店長に腕を掴まれた。視線を感じて振り返ると、龍さんがキッチンからこちらを見ているのが判った。そして、注文をとっているツルさんも。

「え、―――――――何がですか」

 私はぱちくりと愛嬌あると思える顔で店長を見上げる。

 自分でも動揺していたのだ。だからそれを隠したかった。イメージはぺこちゃんだよ、そう言い聞かせながら店長を見た。

 いつも眉を開いて優しい笑顔をしている(そう見えるってだけだけどね、笑顔は優しげでも言ってることはえげつないからね)店長が、怪訝な顔をして見下ろしている。

「何が、じゃないでしょ。明らかに魂抜けてるよ」

「そ、う、ですか?」


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