【完】俺が消えてしまう前に


「樹君、愛希ちゃんはちゃんと生きてるよね?」


「生きてるに決まってるだろ・・・!」



七海は切ない顔をして、
そっと手を伸ばしてきた。


「・・・樹、君?」


七海の手は愛希の体をすり抜ける。

そして、
俺は気がついた。



七海の腕が俺の体をすり抜けている事を。


愛希は泣き疲れたのか俺の腕ですやすやと眠っている。




「・・・どうして触れないの?」



信じられない。
こんな非現実的な事。


「ねぇ、樹君」


だけど俺はきっとどこかで勘付いていた。


「愛希ちゃんにも、樹君にも触れないよ?」


自分がこの世のものじゃない事も、
非現実的な事を信じたくないって事も。


本当は、
気付いてたんだ。



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