ダイヤの恋人 〜June bride〜
不意に、ノック音がコンコンと響いた。


窓辺に置かれた椅子から立ち上がって振り返ると、開いたドアから介添人を務めてくれる有田(アリタ)さんが顔を覗かせた。


「瑠花(ルカ)さん、そろそろお時間です」


小さく頷くと、彼女はフワリと微笑んだ。


「旦那様のご準備も整ったようですし、お会いするのが楽しみですね」


「あ、はい……」


“旦那様”って言葉にまだ慣れなくて、頬が僅かに熱を帯びる。


それでも、理人(リヒト)さんの事を思い浮かべれば自然と笑みが零れ、胸の奥に柔らかな甘さが広がっていった。


「では、行きましょうか」


「はい」


「足元に気をつけて下さいね」


ウェディングドレスの裾を持った有田さんに頷き、二人で部屋を後にした。


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