「それに気付くのは、“元・指導係”だった俺だけの特権かな」


慌てて僅かに赤くなっているらしい顔をどうにか冷まそうと考えるけど、そんな歯の浮くようなセリフをつけたされたら、目の前の炭火も手伝って余計に熱くなるばかり。


「ははっ。可愛い」


私の必死な姿を見て、目がなくなるほど細めて笑い、スッとさりげなく伸びてきた手が私の頭をくしゃっと撫でる。

「可愛い」とか、女の子扱いされることに慣れていないんだ、とこんなふうに気づかされるなんて。

神宮寺さんの手を振り払うこともせず、黙って両手を膝に乗せて、赤い顔を隠すように俯いていた。


だめ、だめ、だめ。

こんな、『キャラ』にもないような反応するなんて、誰がバカにしなくても自分が滑稽だ、って笑っちゃうわよ。

いつも、こんなとき私はどうしてた?
軽く、ハッタリでも余裕のあるように見せてきたはずじゃない。


「……こんな歳で、しかも“私に”『可愛い』だなんて……神宮寺さん、視力落ちたんじゃない、ですか」


絞り出した、なんとも弱々しい声。
こんなときでも『阿部美雪』であるために強がる私を、神宮寺さんは呆れて失笑するだろうか。


「失礼だな。俺は両目とも2.0だ」


分厚い手で頬づえをつき、顔を少し傾ける。


「髪、伸ばさないの?」
「え?」
「俺は阿部の長い髪、好きだったから」


そして、彼は失笑するどころか、ものすごく優しい眼差しで笑ってた。