おかしな二人


時間をかけ、混みあった街を抜け出し、途中でタクシーを待たせて大きな薬局で風邪薬等を買った。
そこから民家が居並ぶ裏通りに入ると、タクシーはスムーズに大きなマンション前へとたどり着いた。
英嗣から借りたお金で支払を済ませ、タクシーを降りる。
目の前に立ちはだかるマンションを前に、あたしは溜息を吐いた。

「本当に、ここ?」

英嗣のマンションも凄いと思ったけれど、凌のマンションは更に上をいっている。
あたしが無知すぎるだけで、凌ってきっと物凄く売れっ子のモデルなんだろう。

そんな凌と兄妹なんて、実は恐れ多い?

無知って恐い……。

木目の出入口サイドに、大きなガラス張りの綺麗なエントランス。
恐る恐る自動ドアを抜け、名刺に書かれている部屋番号をプッシュする。

程なくして、無言のまま次の自動ドアが解除された。

なんの言葉もなく開いたドアに、それほど凌の風邪が重症なのかと思わせる。


< 490 / 546 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop