もうとっくに店では秋を思わせる商品が並ぶのに、実際はまだ夏の気温だった。
秋らしさを感じるのは朝晩くらいだろう。


日傘をさして歩く道程が、じっとりと汗を滲ませる。
服が汗で張り付いて気持ち悪い。着いたらシャワー浴びよう。


ゆるゆると続く坂道の上に、少し古い団地が見える。
五階建て、横長の建物がいくつも並ぶ公営の集合住宅が私の育った場所だ。


外観は皆一様に灰色でお洒落度低め、余り良いとはいえないけれど、棟の間には公園がいくつかあり、人工的に植えられたものとはいえ緑が豊富で私は好きだった。


とんとん、と足音を鳴らしながらコンクリの打ちっぱなしの階段を上がる。
2階の角部屋。


一応、インターホンを鳴らすけど、返事は期待してないから既に片手はバッグの中で鍵を探している。



「お母さん、ただいまー」



ドアを開けると、薄暗い家の中から、お酒の匂いがした。
いつものことだけど、母の顔を見る気力が萎えてくる。


テーブルの上にいくつも転がるビールの空き缶を手近にあったビニールに集めながら、家の中を見渡した。


シャワーよりまず、掃除からだな。


リビングの窓に近づき、閉められたままのカーテンを勢いよく開くと、一息に差し込む光。同時に振り向いて、笑顔を乗せた。



「お母さん、帰ってきたよ!」



ソファの上に、まぶしそうに手をかざしながら寝転ぶ、母の姿がある。