契約妻ですが、とろとろに愛されてます

切り傷

衝動的に電話を切った私は自分のそっけない態度を後悔していた。


重要な立場の琉聖さんなんだから遅くなるのも仕方ない……申し訳なかったな……。


琉聖さんといられる秘書を羨ましく思いながら、空腹を感じてテーブルにのった料理のお皿をレンジにかけに行く。


揚げ出し豆腐……たしか、ゆずがあったよね。


冷蔵庫の野菜室を開けて丸い大きめのゆずを取り出す。包丁を出してゆずの皮を剥いていく。


「いたっ!」


琉聖さんを考えていて、指を包丁でうっかり切ってしまった。左の人差し指から血が出ている。人差し指を水で洗い流し清潔なタオルで押さえる。


「やっちゃった……」


リビングに戻り引き出しから救急箱を出す。小さな傷なのだがタオルが赤く染まっていく。


大丈夫だよね?それほど深くないし……。


救急箱から絆創膏を取り出してぎゅっと傷口に貼った。

< 202 / 307 >

この作品をシェア

pagetop