Only One──君は特別な人──
でも、車になんか乗る気なんてなかった。

だってもう話をする必要なんてないんだから。

「ごめん。あたし急いでるから」

そう言って、背を向けようとしたのに、竜くんに腕を掴まれた。

「──オレが話をしたいんだよ。だから車乗れよ」

「何よそれ! 一方的じゃないの!」

「一方的なのはもえオマエも一緒だろ? さっきより更に注目されてるけど、ここで痴話ケンカ続けるか?」

「……」

竜くんは、助手席側のドアを開けあたしを車に乗せた。

わざわざ丁寧にシートベルトまで閉めてくれる。

あたしは竜くんが運転席に回ったのを見計らって、車から降りようとしたけど、間に合わなかった。

慌てていたせいか、シートベルトがうまく外せなかった。

もたついているうちに、竜くんが運転席に乗り込んで来て、


──車はいとも簡単に走り出していた。

 


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