発展途上の王国



ボードには空白の部分がほとんどない。

<ハルヨシ先生>の描く世界は漫画というジャンルを超えて、
小説の表紙や挿絵、
企業広告などに起用されることも多くなった。

その中にはキャラクター主体のものから風景画と幅が広く、
作品によってタッチを変える美麗な絵は<ハルヨシマジック>と呼ばれるくらいに知名度がある。

本業の漫画よりも有名だ。



「そう思うなら、もっと軽くしてあげてください」

「他出版社のことまで責任取れません」



よろしかったらどうぞと差し出そうとした食後のアイスコーヒーを引っ込める。



「そんな意地悪しないでください」



冗談でやったことなのに苦笑されると、
自分の大人気ない行為を認めなくてはならなくなりばつがわるい。



「櫻井さんはミルクなしの、砂糖たっぷりでしたよね」



わたしは体裁を整えるようにガムシロップを多めにケースに入れて渡した。



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