嘘の誓いとLOVE RING
涙の出張の夜


出張は、会社が所有する研修センターで、一泊二日の日程で行われる。

取締役らが集まり、来期の社員教育やら、上層部の指導やらの方針を考えるらしい。

この研修センターは、県外の山奥にあり、毎年新入社員が、研修で使う場所だった。

だから、設備も整っているし、徒歩10分ほどの距離には、会社と提携している有名ホテルがある。

今夜は、そこで宿泊をする事になっていた。

研修センターは、一度改装されているらしく、近代的な大きな3階建ての建物で、中央にある螺旋階段が目を引いた。

「美亜さん、今日は他の取締役のお世話もありますから、分からない事は聞いてください」

にこやかに微笑む佐倉さんに、私はぎこちない笑顔しか返せない。

会議の準備も済み、お茶出しを終えたところで、私たちの仕事はしばらく休憩だ。

「隣の部屋で、ゆっくりしましょう」

佐倉さんに促されて、隣の小さな部屋へ入る。

そこには、ホワイトボードと、長机とパイプ椅子が置かれていて、まるで教室の様だった。

そこへお茶を持ってきた佐倉さんが、私の前へ置いてくれた。

「美亜さん、少し顔色が悪い様ですけど、大丈夫ですか?」

心配そうに顔を覗き込む佐倉さんが、そう声をかけたのだった。

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