ホームレスのおじさんに恋をした
出会い
私の名前は香織。


県内トップクラスの公立高校に通う高校2年生。


自分で言うのもなんだけど、私は結構成績が良い。


高校１年の時から、ずっと学年トップの成績だった。


予備校には行かず、学校の授業だけでその成績を維持することが簡単にできた。


先生からは東大の理Ⅲを十分に狙えるって言われてる。


でも、私は医者になりたいわけではない。


将来やりたいことがまだ決まっていない。


というより、やりたいことが何もない。


何が好きなのか、何をやりたいのか自分でもよくわからない。


今はただ、目の前に与えられた授業や試験を機械的にこなしているだけ。


周りからはいつも羨ましがられる。


頭が良くて、可愛いくて、ホント羨ましいって。


街を歩いていても、よく男性に声をかけられる。


この前は、「モデルにならない？」ってスカウトされたこともある。


でも、私は毎日楽しくない。



時々思う。


私って人間なのかなって？


小さいころから、私には感情があまりない。


何かを好きになったり、楽しんだり、泣いたり、笑ったりすることがほとんどない。


周りのみんなは大きな声で騒いだり、笑ったり、はしゃいだり、怒ったり、時には声をあげて泣いたり、なんだかとても楽しそう。


私にはそれがすごく羨ましい。






実は、私は生まれてこのかた、人を好きになったことがない。


今まで一度も。


高校２年の夏、あの人に出会うまでは。














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表紙・目次

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