【短編】もう少しだけ
もう少しだけ

-KAYANO-




放課後。



薄暗くなった教室の1番後の隅っこ。


掃除用具を入れたロッカーにトンッと背中があたった。

ひんやりとした感触が、薄い白のブラウスから背中へと感じる。


目の前には、付き合って半年の彼氏が、少し恐い顔をして立っていた。


その顔を見ると、やっぱり後ずさりしてしまう。

けれど、もう下がる余裕なんてない。



「まっ、待って?」



両手を開き、彼氏の胸の辺りを押さえた私に
目を合わさず、



「ほら、やっぱり」



そう言い残し、教室のドアを少し乱暴に開けて行ってしまった。



真祐(マヒロ)とは、告白されたから何となく付き合っただけだった。


必死に告白する姿が愛しいって思ってしまった。

私の言うことなら何でも聞いてくれる真祐に甘えてたのかな?


彼氏と彼女と言うよりも、飼い主と飼い犬って感じになっていたんだ。

それでも楽しかったし、上手く行ってたんだと思う。


ううん、そう思っていたのは、私だけだったんだよね?





< 1 / 23 >

この作品をシェア

pagetop