優しい君に恋をして【完】

憧れの彼




今日は、昨日よりも早く起きた。



洗面所で、何度も髪を結わき直した。



会えるかわからないけど、


もし会えたら、少しでもかわいく思われたい。



少し高い位置で一つに結わき、

前髪をまっすぐにとかすと、




......いつもとあんま、変わんないじゃん。





もう!!!


もう一度やり直そうと思ったけど、


また、時間ぎりぎりになっちゃうから、




しかたなくあきらめて、玄関へ向かった。


「いってきまーす」




「いってらっしゃい。気をつけてね。



電車大丈夫?痴漢とかいたら.....」

「大丈夫だよ。そんなのいたら、とっ捕まえてやるから。


じゃあ、いってきます!」




なにかまだ言いたそうなお母さんを残して、

玄関の扉を閉めた。





まだ時間に余裕はあったけど、


急いで自転車をこいだ。






会えますように。



あの人に会えますように。









昨日と同じように、駐輪場に自転車を停め、


駅に向かい


改札を抜けると、


6番線のホームへ続く階段を下りた。







階段を下りている途中で、




ドキッとして思わず立ち止まった。





あの人が、





階段からすぐのところの列に、



並んでいたから......






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