ほんの数滴、小さなオイルポットに精油を落とすだけで

ささくれ立った心が誰かにそっと撫でられたように穏やかに静まる。

そんなアロマテラピーの魅力に取りつかれていくつか資格を取り、専門店のショップに勤務するようになってもう7年が経とうとしている。


「今日も疲れたな……」


バスルームから上がり、濡れた髪を乾かすこともせずにベッドに倒れ込む私の足元には、もう長い間使っていない陶器製のオイルポットが埃をかぶっている。

疲れを癒すためのツールであるにもかかわらず、今の私にはそれを使う気力も残っていない。


好きな物を販売する今の仕事はとても楽しいし不満はない。

仕事に没頭しすぎてここ何年か恋愛の一つもしていないけど、特にしたいとも思わない。


綺麗にお化粧して、女の子らしい服を着て、控えめに相づちを打って、小食に見せかけて……そんな面倒なことしなきゃならないならずっと一人でいい。


大雑把なナチュラルメイクに、後ろでひっつめただけの黒髪。

無地の黒いエプロンの下は、ジーンズに白いシャツ。

毎日そのシンプルなユニフォームで戦う自分を気に入ってるから、寂しくなんてない。


……ああ、眠くなってきた。


明日もまた、頑張ろう。


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