「坊っちゃん、坊っちゃん……
サト坊やちゃんっ!」


「うわっ、何だよトキさん?
驚かすんじゃねぇよ。
それにサト坊やちゃんってやめてくれよ。
俺のこと、いくつだと思ってんだよ。」


「坊っちゃん……すいません。
けれど何度もお呼びしたのに
気づいて頂けなくて、つい昔の呼び名を……
失礼いたしました。
しかしながら、坊っちゃん
その手元をご覧になってくださいまし。」


トキさんに言われて手元を見るとーーー
粉末の抹茶がボウルの中に
大量に投入されていた。


「チッ……こりゃダメだな。」


今日は水無月を作っていた。


水無月ってのは、6月の末に
京都の古くからある神社なんかで
無病息災を願う行事があって


この日に水無月という和菓子を
食べると厄払いになるって言われている。


味はうちでは小麦粉と米粉から
作っていて甘さも控えめで
割りとシンプル。


古くからある定番菓子で
あの三角形の形と
ゴツゴツ乗せられた小豆が特徴だ。


他にも黒砂糖入りや
抹茶入りのも作っている。


そしてその元の生地に
ほんの少しの抹茶を
入れるところ
うっかり大量の抹茶が
投入されていた。


「坊っちゃん、どこか具合でも
悪うございますか?」


「いやっ、ちょっと手元が
滑っただけだよ。
トキさん、明日には注文分と
店頭用、合わせて120個
ちゃんと用意しておくから
トキさん、今日は上がってくれよ。」


「ですが坊っちゃんお一人では……。」


「大丈夫だって。
それにちょっと集中してやりてぇんだよ。」


「わかりました。
でも無理はなさらないでくださいまし。
お声掛けて頂ければいつでも
お手伝いに参ります。」


心配そうな顔してトキさんは
やっと作業場から出ていった。










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