たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
あなたと甘い一時を
伯父であり養父でもある慎一から惟を『婚約者』だと紹介されたのは5月の中頃。さすがにそれを聞かされたときには反発しか感じなかった亜紀だが、今は違っている。

彼女の初恋ともいえる思いの相手が惟だったという事実。そのことを知った時、彼女は彼の囁く甘い言葉に頷くことしかできなかった。もっとも、そのことを後悔しているはずがない。なにしろ、彼女にすれば今の状況は夢のようなものでもあるといえるのだ。

そして、その翌日から当然のように彼女が帰る時間を見計らって、学校まで彼が迎えに来る。最初のうちこそ周囲の目を気にしていた亜紀だが、惚れた弱みとでもいうのだろうか。いくら抗議しても聞き入れてもらえないことに、今では半ば諦めの境地にいたっている。

とはいえ、この状況はある意味で『放課後デート』とでもいえるもの。そのことに気がついた亜紀は、顔が赤くなるのを隠すことができないようだった。



「亜紀、どうかしたの?」



耳に飛び込んでくるのは甘いテノールの声。それと同時に漂ってくるシトラスの香りが、声の主を如実に物語る。それらは、亜紀の気持ちを高揚させ、ますます顔を赤くさせる。

こんなにこの人のことを好きになるなんて思ってもいなかった。

それが今の亜紀の本音だろう。でも、気がついた思いを隠したくはない。そんなことも考えている彼女は、最高の笑顔で声をかけてきた相手に近付いていた。



「惟さん、いつもありがとう。でも、本当に無理してないの?」


「亜紀は心配しなくていいの。僕がやりたくてしているんだから。それに、少しでも亜紀に会っていたい。ひょっとして、そう思っているのは僕だけなの?」

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