翼~開け放たれたドア~
[回想]

なんだか、長い夢を見ていた気がした。

黒髪が近づいてきたあとの記憶がまったくないんだ。

真っ暗闇に落ちていって、もがいていたような感じがするが、ぼんやりとしていてよく分からない。

ただ、浴びせられる罵倒と、身体中を襲う痛みに、なんの感情もわかず、それがすぎるのをひたすら待っていた。

唯一違うことといえば、雷と龍也の声が聞こえてきて、それにホッとしたことくらい。

気がつけばベッドに寝かされていて、雷と龍也と、王覇の奴らがいた。

こんなことは、初めてのことじゃない。

何回か同じようなことがあったけど、どれも全部いいものじゃなかった。

それで、私が起きてすぐに雷から言われた一言が、“王覇に入れ”だった。

それを拒否する私と、折れない雷たち。

その状態がずっと続いている、というわけだったりする。

[回想 終了]

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