シャワーを浴びて部屋着に着替えた私は、リビングへと向かった。
 ソファに座り、紫煙を燻らせながら、鷹城さんはインカム越しに電話をしていた。私に気付いた鷹城さんは、慌てて煙草を灰皿に押しつけると、電話を切って立ち上がる。

「寧音」

 私を呼ぶ声に、気遣わしげな色が混じる。私は微苦笑混じりに彼を見た。

「鷹城さん、今日は本当にありがとう」

 ガバッと深く頭を下げた。
 無断でGPSを付けられていたことについては言いたいことが山のようにあるんだけれど、今は置いといて。結果としてそれに助けられたんだから、素直にありがたいと思えた。

「いいえ。貴女がこうして、……無事とは言えませんが、戻ってきてくれた。それだけで僕は満足です」

 そう言って、鷹城さんは私をぎゅっと抱きしめた。

「うん。私も戻って来れてよかったって思う」

 私の言葉に、眼鏡の奥の双眸が嬉しげに細められる。私も嬉しくなって、ほわりと微笑んだ。

「ああ、その顔。穏やかに微笑む、貴女のその笑顔がとても好きです」

 額と額をコツンと合わせながら、そんなことを呟く。

「あの時、貴女がお祖母さんに見せたその笑顔に、僕は心を奪われました」

 ――――優しい微笑みを自分だけのものにしたかった。

 彼はそう語った。

「白状すると、僕の一目惚れですね」

 観念したように鷹城さんは告白する。私はキョトンと目を丸くした。

「一目惚れだったの、鷹城さん」

 最初、一目惚れ違うって、私程度な顔なんてゴロゴロいるとか言ったクセに。
 私は声を立てて笑った。

「ええ。僕の心をここまで奪った悪い寧音には、ずっと僕の傍で慰めてもらわなければ」

「ふふっ、検討します、社長?」

 悪戯に笑いながら、私は挑発するように彼を見上げた。

「……本当に、悪い子だ」

 私は彼の背にそっと手をまわし、誘惑するようにして抱き寄せる。
 蕩けるような彼の熱い双眸に囚われたまま、私はソファへとゆっくり押し倒された。