「いやあ、しゃちょー大変でしたねえ」

 社長室の扉を開けた途端、殺伐とした雰囲気をぶち壊す脳天気な声が室内に響き渡り、私は思い切り脱力した。

「あのご令嬢は、しゃちょーのストーカーですからねえ。過去の女とかじゃないんで、寧音ちゃん、気にしちゃダメですよー」

 なんでそれを知ってるんだ、徹くん?
 まるで現場を見ていたかのような物言いに、首を傾げる。

「あ、ちなみにオレ、全部見てたんでー」

 ――――やっぱり見てたんかい!

 何故社長のピンチに、社員のアンタが助けに来ないのか。
 まあ、来たとしても、鷹城さんに助けなんて必要ないかもしれないけれど。

「……鷹城さん、なんか冷たすぎだった」

 思ったことをそのまま口にしたら、鷹城さんに睨まれた。

「寧音、貴女はストーカーに同情するんですか」

 ストーカーされてたお前が言うか。って眼差しで問うてくるから、ウッと言葉に詰まる。

「で、でも、あの人女の人じゃない。あそこまで言わなくっても良いんじゃないかな。殺すとか女性に言うなんてあり得ないし。凄く傷ついた顔してたじゃない」

「だから貴女は甘いというのです。気がないのにあるようなそぶりを見せる方が、より残酷ではないでしょうか」

 ……うぅ、はい。仰る通りでございます。
 二の句も継げませんゴメンナサイ。
 項垂れる私に、鷹城さんの笑う気配がした。

「僕の興味は全て寧音に向いてますので、目障りなものは全て排除します」

 私はそのまま回れ右をした。鷹城さんの顔、今見れない。私の顔も見られたくない。恥ずかしすぎる。絶対今、顔が赤くなってるはず。首から上が燃えてるみたいに熱いもの。
 鷹城さんの興味は全て私にって……臆面もなくそんなセリフを吐くなんて。
 さっき、高見沢さんと対峙していた時の言葉もそうだけど。
 羞恥心とか恥じらいとか、そんなものが彼にはないのか。
 煩悶する私の目が、大きな窓ガラスへと移る。

 ……うわっ、高ッ、怖ッ!

 窓からバッと目を逸らし、また身体をずらせて違う方を見るんだけど。
 今度は徹くんの爆笑する声にビクッとなった。

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