スイートナイト
もっと早くに巽と出会っていたら、私はこんな結婚生活を送ることなんてなかったかも知れない。

愛のない、孤独だらけの結婚生活を過ごすことなんてなかったかも知れない。

巽に出会っていたら、優を夫に選ぶこともなかったかも知れない。

唇が離れる。

「静希」

巽が私の名前を呼んだ。

カウンターの下で、巽が私と手を繋いだ。

「これも、2人には内緒な?」

イタズラっ子のような笑顔を浮かべた巽に答えるように、私は彼と繋いでいる手を握り返した。

何だか、秘密の関係みたいだ。

そう思ってしまったのは、仕方がない。

私は、優との離婚の意思を強めた。

大丈夫。

私には巽がいるから。

優と離婚したら、巽と結婚しよう。

巽と手を繋ぎながら、私は決意した。
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