スーパーの中を捜すと、米ぬかは乾物コーナーであっさり見つかった。
 そばにはぬか漬け用の容器と重りがセットになったぬか漬けグッズも置いてある。家にそんなものはないので、ついでに買ってスーパーを出た。

 買い物荷物はどんなに重くても私が全部持って帰る事にしている。特に今日は漬け物石があるので重さが尋常ではない。

 けれどザクロに渡すわけにはいかないのだ。
 ザクロの持っているものは、ザクロと一緒に周りの人からは見えなくなる。
 けれど受け渡す時、周りから見れば、私の持った荷物が忽然と消えたり現れたりしているように見えるだろう。

 誰が見ているかわからないので、そんな怪奇現象を起こすわけにはいかない。

 家に帰って玄関を開けると、ザクロはいつものように頭を下げた後、私が肩に担いだエコバッグを急いで受け取った。


「重かったでしょう。申し訳ありません」
「いいよ。せめてこのくらいは筋肉使わないと。毎日ザクロのおいしいごはんを食べて、何もかもザクロにやってもらってると太っちゃう」


 笑いながら肩をぐりぐり回している私を、ザクロは真顔で見つめる。そして突拍子もないことを口走った。


「頼子、脱いでください」
「は?」


 何をいきなり脈絡のないことを! 夜のお相手はお断りしたはずだけど!

 焦って後ずさりする私を玄関の扉まで追いつめ、ザクロは真剣な表情で素早く上着のボタンをはずした。
 続いてブラウスのボタンに手をかける。その手を押さえながら私はわめいた。


「ちょっと! なにするの、やめてったら!」


 私の言葉を無視して、ザクロは無言のままボタンをはずし続ける。

 狭い玄関に追いつめられては逃げ場がない。いつもは穏和で紳士的なザクロの、有無を言わさぬ強引さに私の頭は混乱した。

 感情の見えない紅い瞳が怖い。

 右手でザクロの手を押さえつつ、私は左手でドアノブをガチャガチャ回した。
 どうして開かないの!

 私が混乱している隙に、ボタンをすべてはずし終えたザクロは、ブラウスの左側を勢いよく開いた。


「いやっ!」


 肩にスッと空気が触れて、私は思わず首をすくめて目を閉じる。
 ところが、ザクロの動きはそこで止まった。恐る恐る目を開くと、相変わらず真剣な表情で露わになった私の左肩を凝視している。


「やはり、痣になっています」
「え……?」


 ザクロの視線をたどり、自分の左肩に目をやる。ブラのストラップの横に赤い帯状の痣ができていた。
 荷物の重さで内出血を起こしたのだろう。


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