返事をした次の瞬間に、ザクロはコートを羽織っている。どういう仕組みなのかはわからないが、ザクロは変身ヒーローや魔法少女のように一瞬にして着替えることができるらしい。繭から出てきたときも服を着ていたくらいだし。

 燕尾服だったりスーツだったり、それらの色が変わっていたり、一応毎日違う服を身にまとっている。

 たぶん「全部脱いで」と言えば、一瞬にして全裸になれるのだろう。言ってみるつもりはないけど。

 駅前のポストに年賀状を投函して、母の好きなカニの足をお土産に買って、私は電車に乗り込んだ。

 実家の最寄り駅へは、各駅停車の鈍行列車に揺られて小一時間ほどで到着する。駅に着く頃にはすっかり日が落ちて、あたりは暗くなっていた。

 空からはとうとう雪がチラチラと舞い始めている。明日の朝は雪景色になっているかもしれない。

 実家は駅から徒歩で十分くらいのところにある。私はコートのフードを頭にかぶせて、駅を出た。

 駅前の小さな商店街を抜けると、まわりは住宅街になる。田舎の住宅街は街灯もまばらで、足元も見えにくい。暗くなって出歩いている人もいないので、私は気兼ねなく後ろからついてくるザクロに話しかけた。


「久しぶりの故郷はどう?」
「ずいぶんと様変わりしています。こんなにたくさんの家はありませんでした。道も広くてきれいになっています」
「ザクロが知ってるここはどうだったの?」
「田んぼと畑が広がっていて、所々に家がありました。あの山はもっと大きく見えました」


 ザクロが指さす住宅街の向こうには、清司の神社が管理している山がある。このあたりは比較的最近に開発された町なので、背の高いマンションがいくつか建っていて、山はその向こうに頭が見えるだけだった。

 私の家は昔からの地区にある。住宅街のはずれから、山裾に広がる林の脇にある獣道を少し奥に入ったところだ。

 獣道に入ると家はすぐそこに見えているとはいえ、街灯はない。いつもなら早足で駆け抜けるところだが、今日は途中で立ち止まってザクロを振り返った。


「ほら。ここでザクロの繭を見つけたの」


 私は傍らの藪を指さす。繭を見つけたときにはまだ葉が茂っていた灌木(かんぼく)も、今は葉のない細い枝が絡まるようにしてのびているだけだ。
 ザクロは懐かしそうに目を細める。

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