真新しいスマホ
タイトル未編集

真新しいスマホ

マエはさっき携帯のキャリアを変え、機種変更したばかりの真新しいスマホを手にして、アドレス帳から相手の電話番号を選びかけて、溜息をついて指を止めた。


切欠が欲しかった。

一月前、半年ほど付き合っていた彼氏とちょっとしたケンカをしたまま、仲直り出来ないままでいた。

やっぱりメールでも良いかな・・・

このひと月の間に、何度も何度もメールを途中まで打ってみた。

でも、結局一度も送信ボタンを押せないままだった。

あんな奴やめて、新しい彼を探した方がいいかな。
普通は男性の方から先に連絡をくれるものよ。
それが優しさってことじゃないかしら?

結局、わたしのことなんてあんまり好きじゃないんだわ!
だったら、もう彼とはこのまま自然消滅が良いのかもしれない・・・

真新しいスマホ。


初電話は、彼との仲直り!




心の中ではそう決めていたはずなのに。


新しいスマホを手にしたまま、まだ誰にも発信していない。

あ~ぁ。


「もしかして、機種変えたばかりで困ってたりします?」

不意に、話しかけられた。

声の主は、同世代の男性だった。


「いえ、そういうわけでもないんですけど・・・大丈夫です、一応だいたいは解ってますから」


「そうですか、何か操作を悩んでるように見えたもんで・・・」

そう云って、男性は苦笑いした。

「私が悩んでいたのは・・・スマホの操作じゃなくて・・・」

マエは、なぜかその男性に、彼氏へ電話をしようとしていたこと、そしてその彼氏とは一月前からケンカ状態で音信不通であることを手短に話してしまっていた。


「そんな彼は、振っちゃえばいいでしょ?」

その男性はこともなげにあっさりと云い放った。

「えぇ・・・なんで?」

マエは、マジな目で問いかけた。

「だって、そんな些細なことでケンカになって、男性の方から謝りの連絡がこないままなんて、どう考えたって君のことを大切に思ってないんじゃないかな?」


「そっかな、やっぱり」

「そうそう、そんな男はきっぱりと早めに切っちゃった方がいいよ!」

「えぇ、ホントにそう思います?」

「うん、絶対、ろくな男じゃないよそいつ」


その男性の言葉には、だんだんと力がこもってきた。


その時、マエのスマホにメールが着信した。


「マエごめん!俺、反省してマエと同じキャリアのスマホに今日変えたよ。機嫌直してさぁ、電話ちょうだい!今日はこの後ずっと家に居るからいつでもOKだよ。じゃぁ、よろしく」



「彼からのメール?」


「うん」


「で、なんだって?」


「電話欲しいって、ゴメンだって」


「良かった!」


「うん!」




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