でも、お母さんはキッチンを毎日パタパタと走り回ってる友達からよく聞かされていた。「ご飯よ」と呼ばれると殺風景だったテーブルの上には、魔法がかかったみたいに色とりどりのおかずやホカホカの白いご飯が並べられているんだと。


床にポタポタと雫が落ちた。初めて見た。これが『お母さん』 なんだ。涙を拭うとスリッパのパタパタとした音が聞こえてきた。顔を上げると「どうしたの?」と心配そうに顔を覗き込む女性に縋り付き、声を上げて泣き喚く。


辛い時、そばにいてほしかった。「どうしたの?」とエプロン姿で声をかけて欲しかった。こうやって優しく頭を撫でて欲しかったよ、お母さん。


「・・・すいませんでした」


「いいのよ。気にしないで。久しぶりに娘に甘えられたみたいで嬉しかったわ」


ようやく落ち着いた私に、優しく座るように促してくれた女性は、そっと私の隣に腰をおろした。


「それにしても悠貴くんが人を連れてきてもいいかなんて聞くからてっきり会社の同僚さんかと思ったらこんな可愛らしい女の子だったなんて」


「そんな、可愛いだなんてそれに私は・・・」

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