妖精と彼




俺の家は、明治時代から自宅の隣で銭湯を営んでいる。





夕方から夜にかけて営業する銭湯で、開店前の銭湯の清掃が、俺と姉さんの仕事。






俺が男湯、姉さんが女湯を担当している。




銭湯の清掃は基本的に毎日だから、部活には入っていない。
だけど、クラスでは一人一担当という学校の決まりから委員会に入れられてしまった。





その時だけは早く帰れないから、たまに姉さんに男湯の清掃を頼む時もある。






ちなみに、『女湯には何があっても営業前でも絶対に入るな』、と父さんに強く言われている。






「デリカシーがない男は万死に値する。」
これが我が家の男の家訓だった。






夕方に欠かさず行っている清掃ももう慣れたもので、時間をかけずに終わらせることが出来るようになった。





清掃が終わった後は、両親と交代して家に帰る。
両親は、開店から閉店まで銭湯の番台に立っている。





おかげで、両親との家族団らんの食事…というのはほとんど取ったことがない。


いつも、夕食は姉さんと二人だった。











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